高騰する米価格と、その対策、米不足の原因について

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高騰している米の価格についてです。90年代からの米価格をプロットすると、驚きの事実があります。以下、2024年に米を作ってみた米作一年の人の見方ですが、それだけに消費者からの目線と、生産者目線での新鮮な驚きがあると思います。

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高騰する米価格と、その対策、米不足の原因について

すでに予測されていた米価格の高騰

最近話題になっている米の価格。なんでもスーパーでは5kgが4000円とかで売られているらしい。※私はスーパーでお米を買わないのであんまり分かってない。

近所の田んぼ、なんとも美しい稲穂

2024年の年末には米の買い占めが入っているのが分かっていて、農家の人と2月には騒ぎ出すんじゃないかって話してたら、まさかのその通りになった。

ところでつい先日、近所の農家さんがニュース記事になっててびっくりしました↓

「そもそもコメはこれまで安すぎた。肥料にガソリンに機材も値上がりで赤字続きだよ」それでも日本のおいしいコメを作り続ける農家の嘆き「15万トンの放出米なんて1ヶ月ももたないね」(集英社オンライン) - Yahoo!ニュース
「令和の米騒動」とも言われるコメの異常高値が続き、政府は備蓄米21万トン(初回15万トン、状況をみて追加)の放出を決定。江藤拓農林水産大臣は2月18日の閣議後記者会見で「大手スーパーに卸売業者からコ

そもそも2024年夏の米不足って一体何だったのか?

米価格については、そもそもだけど、2024年の夏、新米の前の時期に米が不足気味になって、スーパーで価格が高騰していた。つまり2023年度産の米が不足していたのがスタート。理由は高温による稲作障害とされている。

2025年の米価格高騰について

そして2024年度産の米もまた上がるだろうということで、米が投機の対象となり買い占めが入った

ここで、また上がると予想されたのは、米の生産量が回復するというより、むしろ今後は減っていくと考えられる理由があるからだ。

2024年に私も米を作りましたが、例年の積算気温からの予想よりも、一ヶ月近く早い収穫になるほどの暑い夏でした。

米の買上げ価格の推移と、スーパーでの米価格の決まり方の問題点

高騰しては困ってしまう米価格だけど、どこを基準に誰目線で話をするのかで捉え方がかわってくる。

このあとの話には、(1)JAの買上げ価格(=農家の売上)と、(2)JAの販売価格(=JAの儲けがのる)、それに(3)スーパーでの販売価格(=スーパーの儲けがのる=みんなが認識している価格)の3つが出てくるので区別して読み進めて欲しい。

田植え前の田んぼ

JAが悪いというような論調もあるけど、少なくともうちの近所のJAは、米の買上げ価格の1.5倍程度で販売しており、JAが暴利を貪っているというようなことはないはずだ。

ここで米の買上げ価格をプロットしてみよう。

縦軸が一俵(60kg)あたりの価格(円)、横軸が年度になる(1990年から2024年まで)

驚きの事実かもしれないけど、1990年代と今の米の買上げ価格はほぼ同じ。むしろここ最近の米の価格が「安すぎた」。場合によっては、農家は米を売っても赤字という状況が発生していた。

農家目線で考えれば、今回の米価格上昇は悪いことではないし、むしろ適正化の第一歩だ。(だから農水省はこの段階で介入するはずがない。なんならこれまで極端に安い米を消費者に回していたのだから、叩かれる理由がわからないと思う。実は米が安定供給されてるのはかなり珍しいことなのだから)

赤字になってしまっていた理由の一つは2022年からのウクライナ戦争。燃料や肥料などの価格が上がったのに、それが米価格には反映されていなかった。実際にその時期に、これはやってられないと離農した人たちがいる。信じられないような事態だけど、のどかな千葉の片田舎でもそんな事が起きている。

一年間、放棄されてしまった田んぼ。復活させるのは大変そうだ。私の家の裏の田んぼだって、その時期に放棄されてしまった。

メディアでは高温障害での不作と言っていたと思うけど、決してそれだけではなく、裏にはこういう事情もあったわけだ。また、現在の米農家の平均年齢は74歳。これからの10年で米作の担い手が激減していく。

つまり、このままでは米不足は解消しないどころか、下手をすると加速してしまう。ここが投機の入る理由のひとつだと思う。

こんな条件のいい田んぼは、会社などが入って維持されるだろうけど、条件の悪い田んぼを維持していくのは難しい。

ところで、もっと長いスパンで考えると、米はもっと贅沢品だった。1950年は5kgで11,824円(現在の価格に換算)だったというのだから、信じられない。※こちらの統計を参考にしました↓

https://nenji-toukei.com/n/kiji/10027

だから、米の価格については、「農家から見れば若干の適正化」、「投機の対象となり、一般市場で高騰化」という2面性があり、問題なのは後者。政府としてやるべきことは投機を防ぐのが、今後の対策になるだろう。

そもそも、農家のなり手になろうと思える米価格はいくらなのか?

わざわざ減反政策をするくらいなら有機栽培でやるのはどうか?これなら化学肥料の高騰などに影響されづらいし、環境保全にもなる。

実際、私も計算したことがあるが、有機栽培の米農家として生計をたてようとすると、米価格は今の高騰した価格よりももっと高くないと難しい。今、60kg 2万円(JAの農家からの買上げ価格)で高い!高い!と大騒ぎしているが、ざっくりした計算で約4万円くらいでないと有機栽培農家のなり手は増えないと思う。つまりJAの一般消費者への販売価格で10kg1万円(米農家から直接買えば7000円)。今の高騰した価格よりも高いくらいだ。環境負荷が低くメリットのある有機栽培だが、販売用というより自給用でやるのもいいかもしれない。

いすみ市は有機栽培米を学校給食に出している。これは市が有機栽培米を慣行農法よりも高く買い上げている。

もし今の価格で参入できるとしたら、大規模にやる農家だけだ。つまり慣行農法で農機具を使って薄利&大量生産でやるしかない。

大規模農家の推進?2025年4月から農地の管理が変わる

ちなみに、農地中間管理機構(農地バンク)がこの2025年4月から出来る。(この仕組みについてはあんまり詳しくないけど)これまでと異なり、農地の貸し借りは必ず農地バンク問題を通すようになる。これによって集約的な農業ができるようになるという仕組みのようだ。つまり安いコメを大量生産できる大規模農家を作りやすいメリットがある。ここで、有機栽培の農地と慣行農法の農地は分けて運用されることを望みたい。デメリットとしてはやはり利権構造ができないか?ということだと思う。

また政府が事前に供給量を把握出来るよう、食料供給困難事態対策法というのもセットで施行される。

食料供給困難事態対策法について:農林水産省

このように、政府は対策を進めている。

農家は米を増産できるのか?

生産者が高齢化しているとはいえ、まだ若い担い手もいる。じゃあ彼らが皆、米を増産できるのか?というとこれまた難しい問題がある。既に地域の老人から託された田んぼで手一杯になっていたりするからだ。人を雇わなきゃやれないレベルになると一気にハードルが上がる。

運良く借りれた場所で、不耕起、無農薬&無肥料で作付けしてみた田んぼ

個人ではない農業会社だって、なかなか大変だということを聞いている。これだけ儲からない米作だから、例えば谷津にある田んぼなんかは非常に生産効率が悪く、会社でやる田んぼには向かない。そういった会社は、平地にある生産性の良い田んぼだけを耕作せざるを得ない状況だ。

そういう理由で、地域の農業を守っていた老人から「田んぼを大切にしない」と言われ、会社は評判がよくない。とはいえ、会社としてもここまで採算性が低い米となると、やむを得ないとも思える。

これは田んぼなどに住む、日本で一番小さいネズミ、カヤネズミの巣。無農薬で田んぼをやることは、実は生物多様性の維持にもつながっている

新規就農の障壁

また、放棄された田んぼ、新規就農はどうなのか?これは私自身やってみたいと希望を出したことがある。(家の裏の休耕田や、体調を崩して稲作出来なくなった方の田んぼなど)

しかし(1)水利の問題、(2)農機具の問題、(3)生産スキルの問題

で新規就農もまたかなり難しい。

一番は水利。田んぼに大事な水って、地域の人達で水路を管理している。ここに見ず知らずの新参者が入るのは、地域全体の問題になるので、その時点で入り込むのは既に難しい。対策としては、天水での農業を試みることくらいか。

また、田んぼはあっても即戦力を求める地主と、新規就農者のスキルの問題がある。地主は田んぼをきれいに使ってほしいから貸すわけだが、しかし、新規就農者はそこまでのスキルはない。新参者に貸すと田んぼが荒れるから、貸せない、ということになることがある。

農機具も問題で、機具(少なくとも、軽トラと耕運機)と納屋を購入するとかなりの金額がかかる上に、米が儲からないとなると、その支払に目算を建てられない。

田んぼ仕事でドロドロの軽トラ

つまり、米作への入り方が非常に難しい。※結果的に田んぼって、人手不足なのに安い給料で即戦力を求めるブラック企業のようにも思える。

やるとしたら、既に田んぼをやっている人たちの手伝いをしながら米を分けてもらうとか、そういうコミュニティ方式が一番ハードルが低いだろう

いすみ市や鴨川市にもコミュニテイ田んぼがあります

対策:お米を直接農家さんから買おう!

さて、じゃあ都会の方がなにか出来るか?と考えてみると、これは直接農家さんからお米を買うことだろう。私自身も一部の米は農家さんから直接購入している。この良い点は、【1】JAの買上げ価格よりも高い価格(約1.3倍)で農家さんから購入することで農家さんの売上UP、【2】私達はJAや小売店での販売価格(約1.5~1.8倍)より安く買える。ということだ。

まずは3月に種籾選別を行う。ちなみに、今の米投機をしている人たちは、JAの買上げ価格よりも高く(例えば1.1~1.2倍)農家から購入し、小売店並(例えば1.5倍)で売れれば儲かるという寸法だろう。

いまなら米の作付け前で田んぼを耕している段階だから、申し込めばまだ間に合うかもしれない。特に新規就農で困ることの一つは販売先がある。購入者として買い支えてあげられれば、農家さんの力になれるかもしれない。もし知ってる農家さんがいれば、申し出れば喜んでくれるかもしれない。

種籾選別のあとは、浸種。種籾から目を出す「芽出し」の作業

米は、子供の頃から当たり前に食べていたし、贅沢品だなんて思ったことはなかった。しかし、大正時代や明治時代のように、また贅沢品になる時代がやってきてしまうかもしれない。そうなる前に、農家さんから直接購入するのはどうだろうか?

芽出しが済んだら、苗箱で苗を育てる。これを田んぼに植えます

 

個人でバケツで稲を育ててみるのも面白いです。観葉植物代わりに悪くないかも。ちなみに種籾はネットで買えます。

栃木に新規就農された方のブログ(農家になりたい人目線の記事、初めて読むのに適しています)

昔のお米の値段をしらべてみた
お米の価格が記録的な暴落となった2021。そんな時は腹を立てずに昔の米価をしらべてみよう。

農林水産省の米の食料自給率に関する記事。意外な事実ですが、大正時代や昭和初期など、米を100%自給できない時期もありました。

その1:お米の自給率:農林水産省

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政府の資料、コメの生産要請が開始された経緯について

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/dai3/siryou1_1.pdf

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