ロードバイクのジオメトリ、小さいサイズではトレール値の扱いに注意!フレームサイズ選びの参考に

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最近フレームサイズについて相談されたので、自分の見解をまとめてみました。

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ロードバイクのフレームサイズ選び、大きめと小さめ、迷ったらどっち? 小さいサイズではトレール値に注意!

基本的に53サイズ以上ならどのメーカーも真っ当なジオメトリをしていると思います。しかしながら、小さいサイズはそうもいかないことがあります。それは、メーカーによってトレール値の扱いがかなり異なってくるからです。例えば、TIMEとLOOKではトレール値について、真逆の扱いをしています

考え方としては、大きく分けて二種類のメーカーがあります。

1,フォークのオフセットは一種類のみで、小さいサイズでトレール値が大きくなっても気にしないメーカー(TIME、PINALLERO、BIANCHIなど)

2,フォークのオフセットを複数用意してトレール値が一定になるようにしているメーカー(LOOK、ANCHOR、TREK、FELT、CERVELOなど)

の二つです。

トレール値とは?

ジオメトリ表に書かれていることが少ない「トレール値」は、大きいと直進安定性が高くなり、小さいとハンドリングが良くなります。ロードバイクはサイズ53以上だと、58mm程度になるように設計されていますが小さいサイズだとそうなっていないバイクが多いのです。

先ほどの分類で、前者のメーカーのフレームは、小さいサイズではヘッド角が寝ている為、トレイル値が大きくなります。結果、小さいサイズの直進安定性が高まりやすい傾向があります(逆に操作性が悪くなる、orハンドリングが重くなるともいう)。ダンシングでフロントのキレが今一つで、パタンパタンとするように感じられるフレームもありました。

トレールが100mmあるスペシャライズドのMTB、MTBは特に下りでの安定性が重要ですね

因みに普通のサイズではレーシング系ロードは55-58mm、エンデュランス系ロードなら64mm程度、MTBが100mm~120mmぐらいになるようです。

今回のトレール値の計算にはこちらのサイトを参考にさせていただきました。

自転車のフォークとトレイル – 自転車探検!
概要操縦管ブレードトレイルフォークオフセットトレイル 計算器フォークの強度サスペンションフォークツインブレードフォーク1本足フォーク貫通軸操縦安定性能試験フォーク幅および長さタイヤすき間下管すき間空気抵抗フォーク交換とヘッド角工具(弓のこ案...

ジオメトリ表から判断してみる

具体例の一つとして、これはFELTのFR1のジオメトリ表です。私は身長165cmなので、適応身長の470サイズか510サイズで迷うことになりました。

今はラインナップに無いリムブレーキ版FR1

まず、ジオメトリ表から分かる、FELTのバイクの良い点ですが、OF(オフセット)がサイズ毎に三種類も用意されています。これによりなんと470サイズのトレイル値がロードバイクの標準の58mmになります!因みに440サイズは65mm、510サイズで59mm、540サイズでは55mm。

また、過剛性を避けるため、ヘッドのベアリングサイズまでサイズ毎に変更されています

つまり、全てのサイズでヘッド剛性やハンドリングが最適化されているということですね。

これまで乗ってたBIANCHIのトレール値は大きかった(75mm)ので、ロードバイク標準の58mmのトレイル値を確かめてみたかったのもFR1を選んだ理由の一つです。

もしオフセットが大きくなるとトレイルは小さくなります

この FELT FR1 のダンシングはシャキシャキ感があって非常に気持ち良いです。一方でビアンキはハンドルを振るより、ハンドルが真っすぐのまま進むようにペダリングした方が良いように感じます。

このあと少しトレイル値がら脱線するので、トレイル値について読みたい人はトレックとビアンキのジオメトリまで読み飛ばしてください

フレームサイズ選びについて、そもそもスタンドオーバーハイトは適切か

身長とジオメトリをみるとき、SOH(スタンドオーバーハイト)が重要です。バイクから降りたときに股間がトップチューブに激突するようでは安心して乗ることができません!

さて、このフェルトのフレームの場合、SOHが470サイズで676mm、510サイズで710mmです。自分の股下を考慮すると両方乗れますが、低いほうが乗り降りしやすいです。実際に股関節を痛めて、足を上げるのがつらくなった時、470サイズを選んでいたのでギリギリ乗れましたが、510サイズでは相当辛かったでしょう。

470サイズは明らかなスローピングフレームです

特に背の低い女性は、重視した方が良いポイントと思います。

470サイズと510サイズでは、ヘッドチューブ長が1.5cm、シートチューブが4cm異なる

私の迷った470サイズと510サイズでは、大きな違いはヘッドチューブが1.5cm、シートチューブが4cm短くなります。つまり470サイズなら、シートポストが4cmも長くでることになります!

スタックも18mm変わるため、510サイズならコラムスペーサー無しでOK!ステムをコラムにベタ付け出来るので、それはそれでかっこよかったと思います(笑)。リーチは370mmと378mmなので、ステムは510サイズで90mm、470サイズで100mmでOKでしょう。

小さいフレームのメリット

  • フレームが少し軽量になる
  • スローピングになり重心が下がる→ダンシングの振りが軽くなる
  • シートポストが長くでるのでカッコよく見える
  • ステムが長くなるのでハンドル回りのワイヤリングが楽になる

小さいフレームのデメリット

  • フォークのオフセットが一種類の場合、長いステムを使うとハンドリングが不自然になることがある
  • スタックが小さくなるのでハンドルを上げたい場合はスペーサーが山積みになる(恐らくヘッド回りの剛性が下がる)、これは、スペーサーを取り除けばハンドルを下げることが出来るというメリットでもある

今回はオフセットが3種類も用意されているので問題無しです。

TREK(トレック)のEMONDA(エモンダ)の場合

購入にあたってはEMONDA(エモンダ)も検討しました。エモンダはシートマスト形式でサドル高の調整幅がある程度決まっています。つまり、サドル高を重視してサイズを選ばなければなりません

リムブレーキ版の EMONDA SL

身長165cmだとトレックは52サイズを推奨しています。しかし、股下寸法でいくと50サイズ!この場合は50サイズを選んだ方が良いですね。試しに52を試乗した時にサドル高が希望する高さまで下がりませんでした(^^;

TREKは、リーチ&スタックも真っ当だし、フォークオフセットも3種類用意されています。特に、44サイズ用のフォークがあるのが特徴的。トレイル値は、サイズ44、47、50、52でそれぞれ68mm、67mm、61mm、57mmと変化します。ただ、若干スタックが高いのでハンドルを下げたい人は苦労するかもしれません(^^;

適正サドル高はSPECIALIZED(スペシャライズド)のサイトが参考になるかも

ちなみにサドル高についてはスペシャライズドのホームページで算出してくれます。こちらはターマックを買うときの適正サイズを算出してくれます。

https://www.specialized.com/jp/ja/bike-sizing/app#/?mpl=187309

BIANCHI(ビアンキ) SPRINT(スプリント)の場合

ビアンキは他社に比べてBBドロップが浅めなことが多いです。乗ってみたときに、重心が高いと感じるフレームはそういうのが多い。

オフセットは43mmの一種類。55以上のサイズならヘッド角が73度あるのでトレールが58mmになります。

ビアンキ スプリント

しかし、小さいサイズでは長いオフセットが用意されていないのでトレール値が異様に大きくなっています。例えば47サイズではヘッド角が70.5度でトレール値は75mmにもなります。50サイズならヘッド角が71.5度でトレイルは68mm。この2択なら、ちゃんと乗り比べたほうが良いでしょう。

※補足:44サイズのビアンキも持ってますけど、もちろん普通に乗れますよ!(ステムは70mm)。また47サイズのビアンキで、メーカー標準の90mmステムだとハンドリングは自然な感じがします。100mmステムにすると少しダルイ感じ(直進安定性が高まるとも言う。江戸川CRみたいな平坦のロングライドにはGOODです)のハンドリングになります。

このBIANCHIのオフセットはオルトレXR4やスペシャリッシマでも同じです。高級ラインはフォークを作り変えてくれてもいいんですけどね。実はピナレロやTIMEも同様(オフセット43mmのみ)なのでイタリアンバイクはこんな感じなのかも。こういうバイクでは小さめフレームを買って、長いステムで調整するのはお勧めできないと思います。

憧れのオルトレXR4

私はトレール値の極端に大きい BIANCHI SEMPRE の47サイズに乗っていたのですが、明らかに手を放しても安定していて、手放しでもママチャリのように曲がれます。つまり、ハンドルに神経を使わないので、トレールが大きいと長距離のライドは明らかに楽。但し、坂を登るときに前輪を蛇行させるダンシングがやりづらいのが若干難点でした。もちろん、シッティングで回す分には何の問題もありません。

PINALLERO(ピナレロ)のDOGMA(ドグマ)F12の場合

沢山のフレームサイズを用意しているピナレロ。そんなピナレロには、なんとDOGMAにしかないサイズがあります

最新のDOGMA F12

ジオメトリ表の470サイズはDOGMAにしかありません!なんでもカヴェンディッシュ用に作ったサイズがずーっとDOGMAにだけ用意されてるそうです。

ピナレロのフォークオフセットは43mmのみ。ですので小さめサイズに乗るならピッタリとしたサイジングをしたいところですね。このDOGMAにしかない470サイズは、小さいサイズながらヘッド角が71.4で、トレイルが69mm。少しの違いですが、465サイズだとトレイルが75mmになり直進安定性が高まります。トレイルにこだわるなら470サイズも選択肢にいれたいところ。

DOGMA2 CAVENDISH レプリカモデル グネグネしてる頃のDOGMA

ANCHOR(アンカー)のRL9

アンカーのバイクのRL9は、試乗会でとっても乗りやすくてびっくりした記憶があります!

さて、アンカーRL9のジオメトリを見てみると・・・


よく見ると、ヘッド角ごとにオフセットが異なります!まさかと思って計算すると、なんと全サイズのトレール値が62mmから64mmの間に収まっています!!これにはびっくり!ロングライドモデルなので58mmではなく、この設計なのでしょう!これは素晴らしい!!!しかも、リーチとスタックがサイズ毎に増えていく!完璧ですね。

アンカーなら、どのサイズを選んでも間違いないでしょう!シート角も全てのサイズで異なります!!

CHAPTER2(チャプター2)のTERE(テレ)の場合

開発者自身がXSサイズに乗っているという、CHAPTER2はどうでしょうか。

クロモリバイクのようなカラーリング・カワセミ色

まず素晴らしいのがリーチとスタックがサイズ毎に増加していくという点。そして、M以上のサイズでは、ヘッド角73度でオフセット43mmでトレール59mmと真っ当なジオメトリ。

一方、XSとSではヘッド角が70度と72度なのに、両方オフセットが53mmですね。

計算するとトレール値は55mmと67mmなのでハンドリングは少々変わってくるでしょう。55mmは少し短めのトレールになります。もし、ロングライド用ならXSでも良さそう。気になる人は試乗してサイズを決めましょう

また、シート角が全てのサイズで同じ

実は、CANYON(キャニオン)も全てのサイズでシート角が同じ。このタイプのフレームはシートポストのセットバックで調整することが重要です!

CANYON(キャニオン)のAEROAD

恐らく、シート角を同じにすることで後ろ側の金型が少なくて済み、コスパの高い製造が出来るのだと思います。

Cervelo(サーヴェロ)のグラベルバイクASPERO(アスペロ)

さて、Cervelo(サーヴェロ)のグラベルバイクASPERO(アスペロ)はオフセットを変えられる仕組みが備わっているバイクです!

それは何故か?

グラベルバイクは、太いタイヤを履くと、タイヤの直径が変わる為、トレール値が変わってしまいますその補正の為にオフセットの調整機構を追加したのでしょう!これは面白い試みですね!

この黒いパーツを交換することでフォークのオフセットを変更することが出来ます
サーベロはリーチ&スタックだけでなく、BBドロップまで調整しています

なんと全サイズでトレール値は約59.7mm!もし、28cタイヤを入れてオフセットを変更する(小さくする)とトレールは62mm(これはアンカーのRL9と同じ)と、快速ロングライド向けにすることが出来ます。因みにサーヴェロのTTバイクもトレールは62mmで設計されています。

実は東京サンエスから同じコンセプトのフロントフォークが2019年に発売されていました。↓

オフセット量を調整できるカーボンフロントフォークが登場 ワンバイエス OBS-RBD1.25TH - 新製品情報2019
東京サンエスが手掛けるオリジナルブランドのワンバイエスより、オフセットを調整できるカーボンフォーク「OBS-RBD1.25TH」が登場。軽快なハンドリングを求めるシチュエーションや、荷物を積載し安定感を求めるシチュエーションに対応できるユニ...

まとめ:大きいサイズなら小さめを選んでも問題ないが、小さいサイズなら試乗して決めた方が良い。かも

さて、このようにトレール値の扱いは各メーカーによってかなりまちまちです。サイズで迷ったら、基本的には下のサイズの方がメリットが多いと考えています。しかし、小さいサイズのフレームを選ぶときは、1サイズ下げることでトレール値が大きく異なるケースがあるので良くジオメトリを見たり、試乗して確かめることをお薦めします。

そしてロングライドだと、トレール値が大きめの方が楽になるケースが多いです。私のトレール値が長い75mmあるビアンキは、エアロポジションでも安定しているので、平坦を走る時は気持ち良くて好きです。そして、少々の悪路で、ハンドルから力を抜いていても転ぶことはありません。

長い間乗ったビアンキ。最初の一台なので他との違いが分からずに乗っていました。しかし、トレールが短いバイク(FELT FR1やCHAPTER2TOA(Sサイズ))に乗るようになると違和感があります。

一方FELTでは、ビアンキのように力を入れないでいると、悪路でスパッとフロントが切れて落車したことがあるので、58mmのトレール値の方が常に良いとも言い切れません。肩の力を抜いたポタリング&ロングライドに使うなら、トレールは58mmより長くても良いと思います

もちろんFELTでロングライドして、200km近く走っても全く問題ありません(笑)

その後、グラベルバイクのCHAPTER2 AOを追加しました。グラベルバイクなのでトレールは長めの67mm。下り性能や、直進安定性は75mmのBIANCHI SEMPREより優れていると感じます。これはつまり、ホイールベースや、BBドロップなどの数字も変わるし、フレーム剛性なども影響します(AOは明らかにヘッド剛性が高いです)。ですので、トレールだけでは一概には語れないということでしょう。

長々と書きましたが、最初の一台だとこんなことで悩んでも違いが分からないので、店員さんに聞いて適正サイズを買うのが正解です(笑) 2台目以降ならジオメトリを検討しても良いでしょう。今回調べた限りでは、アンカー、FELT、サーベロは素晴らしいジオメトリをしていました。

因みにヘッド角が立っている方が、試乗で「走る」感覚が強くなることがありますが、もちろん実際に速いかどうかは別問題です(^^; 

 

ポジション出しに重要なコラムスペーサーと、Qファクターを調整できるスペーサー。

その後 CHAPTER2のTOAを購入しました。その時 XSとSで迷ったサイズ選びについて

小さいフレームサイズだと、スタックが低くなるのでエアロになるという記事

ステムのインプレ

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