CHAPTER2のバイクデザイナーのMike Pryde氏からお話を伺うことができたので記事にしてみます。
ちなみにタイトルの写真は寿司を食べるマイクプライド氏。WASABlもオッケーだそうです。
- CHAPTER2のロードバイク作りについてMike Pryde氏に話を伺ってみた
- マイクプライド氏の好みのロードバイク
- マイクプライド氏の好みではないバイク
- CHAPTER2のバイクの選び方、TOAとKOKOではどう選ぶといいのか?
- マイクプライド氏のデザインのインスピレーションはどこから来るのか?
- マイクプライド氏は一体何を考えてバイクを作っているのか?CHAPTER2のバイク設計について
- フレーム設計の味付けの具体例、REREとKOKOについて
- バイク設計の時にフレーム重量は気にしないのか?
- フレーム販売のCHAPTER2のコンポはどうするのがオススメなのか?
- CHAPTER2のホイールについて
- CHAPTER2以外の自転車パーツに関するオタク・トークが盛り上がった!
- まとめ:CHAPTER2の設計はトップアスリート専用ではなく、万人向けのフレームということ
CHAPTER2のロードバイク作りについてMike Pryde氏に話を伺ってみた
先日、小田原にあるサイクリングジプシーカフェで、CHAPTER2のバイクデザインをしているマイクプライド氏と一緒にライドするイベントが開催されました。
※サイクリングジプシーカフェというのは小田原にあるココです↓ 美味しい食事とバイクの試乗が楽しめます
折角なんで色々質問してみようと思い、お話を伺ってきました。
※以下、急に話が始まって慌てて録音できなかったのと、英語がきちんと理解できているか怪しい部分があるので読み物程度にどうぞ・・・(^^;
マイクプライド氏の好みのロードバイク
まず聞きたかったのが、設計者本人が一番好きなバイク。何種類かあるCHAPTER2バイクの中で、本人はどれが一番お気に入りなのでしょうか?
マイク氏の答えは「KOKOが一番好き、理由はめっちゃ速いから」。
速いから一番というのは非常に分かりやすい理由。KOKOはCHAPTER2の最新エアロフレームだからそりゃそうでしょう!納得のご回答です。
ちなみにマイクプライド氏のSTRAVAをフォローしていると、どのバイクにどれだけ乗ったかが一目瞭然。明らかにKOKOがお気に入りです。
タイヤは32cがお気に入りとのこと。そして意外なことにタイヤはチューブレス派ではなくクリンチャー派でした。
マイクプライド氏の好みではないバイク
一方で、好みではないバイクの話もしてくれて、実はワーストバイクと思っている具体的なモデル名も挙げてくれました ※CHAPTER2ではないブランドの最高に高価な超有名バイクです (^^;)マイク氏は、踏んでいると足が売り切れて推進力を持続できないと感じるフレームは好みではない。
実際、CHAPTER2のバイクは剛性があっても足が残りやすい印象があります。
CHAPTER2のバイクの選び方、TOAとKOKOではどう選ぶといいのか?
ここで思ったのが、TOAとKOKO。この2台のコンセプトは似たところがある(アスファルトだけでなく、悪い路面まで含めて最速で走れるTOA、エアロフレームに悪路走行性を持たせたKOKO)のですが、乗車フィーリングが異なります。一般的にTOAの方がよりロングライド向けの足残りが良い感じ、KOKOのほうが硬めでレーシーに感じられると思います。この2台の違いについて質問すると、「その二台は、剛性がわりと近い値で制作しているので、好みのデザインの方のバイクを選んでくれたら」ということ。
私としては、フィーリングに結構違いがあるバイクなので、この回答にはビックリ!ただ、気に入ったデザインのバイクに乗って欲しい、というのは、自らデザインもするデザイナーだからこそ。確かに「カッコイイ!」と思うバイクだと、もっと走りたくなります。※それにマイクにとってはどっちも納得のライドフィーリングのはずだし
デザインについてのお話では、本人が口にする、「pretty design」 という単語と、カッコいいバイクに対する 「my romance」 という単語が印象的。ということで、可愛くて憧れのあるデザインがマイクプライド氏好みなのかなと思いました。
マイクプライド氏のデザインのインスピレーションはどこから来るのか?
このCHAPTER2独特のデザインのインスピレーションは、マイクプライド氏がロードで走っているときに浮かんでくるそう。
例えばKOKOのこの「地平線」を意味するデザインでは、バイクに白とグレーの境目があります。これは空と雲の境界、だったり空と海の境界線を意味しているそう。ライド中に目にするニュージーランドの地平線の光景からデザインイメージが湧いてきたのでしょう。
マイクプライド氏は一体何を考えてバイクを作っているのか?CHAPTER2のバイク設計について
さて、TOAとKOKOで「剛性値が近い」という話がありましたが、それはどのように決定しているのでしょうか?なんとバイクの設計について話して頂くことが出来ました。
まず、バイクの設計コンセプトが決まったら、ヘッドの剛性、BB剛性、ドロップエンド(スルーアスクル)などの剛性の目標値を決めるそう。この段階で、マイク氏がベストバイクだと思うバイクの剛性値などを詳細に分析して参考にするとのこと。
そして設計にあたっては、フレームの下半分(BBやダウンチューブ、主にパワー伝達性)と上半分(主に振動吸収性)でライドフィーリングの調整をしていく。
そういえば、新モデルの説明で「このバイクはどういったターゲットに向けて開発したものですか?」という質問に対して「自分用のバイク!」と答えていたマイクプライド氏。既存のベストバイクも参考にしながら、マイク氏の納得できる性能に設計していくということですね。
フレーム設計の味付けの具体例、REREとKOKOについて
フレームの味付けについては具体例をあげて教えてくれました。
“例えばREREとKOKO。REREはシートポストが固く、シートステーを少しベンドさせて柔らかくして振動吸収性を得ている。一方で、KOKOはシートポストを柔らかくして振動吸収性を確保し、シートステーを固めることでヒルクライム性能が高まっている。”
マイクプライド氏曰く、フレーム設計はバランスだとのこと。例えばエアロを追求すると縦剛性が高くなりすぎたりする。
ところで、さっきのTOAとKOKOの例だと、TOAはリアの振動吸収性を高め、KOKOはリニアな反応性にバランスを振っているのだと思います。
またREREのような翼断面は、大きなサイズのフレームではねじれの問題が出てくる。だからその課題を解決するために、KOKOではチューブの形状を変えている、というお話もありました。これ、大きなサイズの方が課題が出るというのが面白いポイント。あくまで身長162cmのマイクプライド氏用の XS Size を基準で作るという CHAPTER2 らしい話。
XSが基準というのはこの上下の2台のバイクをみると分かりやすい。上がXSで下がLサイズ。XSの方がカッコいいんじゃないかと思います。
バイク設計の時にフレーム重量は気にしないのか?
さて、最近のCHAPTER2では、軽量なバイクは発売されていません。Specializedの AETHOSや、YONEXのCARBONEXなど、600gくらいのフレームが発売される中では、どちらかというと重めのフレームという印象。
具体的には、CHAPTER2で軽量なクライミングバイク HURU 819g、最近発売された、TOA 1099g、KOKO 1139g 、KAHA 1099g となっています。
ということで、フレーム重量は気にしていないのか?と質問しました。そしたら
「確かに、みんな買うときにバイクを持ち上げて軽さを確かめるから、軽い方が販売上のPRがしやすいんだけどね」。
「軽量なフレームは、発進の時には軽く感じられる。しかし、実際のライドでは明らかにエアロダイナミクスの方が重要だ。また軽すぎるバイクは安定感に欠け、下りで怖い思いをすることがある(この怖いは terrible(酷い、恐ろしい、ぞっとする) ぐらいの表現)」
マイクプライド氏は、「MTBのダウンヒルのプロライダー=※UCIアジアランキング12位」だったので、下り性能は妥協できないのでしょう。(実際、下りでめっちゃ攻めるそうです)
CHAPTER2のカーボン素材のグレードは、他の有名ブランドのハイエンドと同じということなので、素材が重いわけではない。だから、販売しやすいように数百グラムを軽くするよりも、安定性やエアロ性能、パワーロスしない為のBB剛性、また、パワーを持続できるライドフィーリングに性能を振っているということですね。
確かに HURUも軽量とはいえ、スカスカ感のある軽さのバイクではなく、なんだか味わいのあるバイクでした。だからもし、CHAPTER2から軽量バイクが発売されるとしても、軽さだけを重視したものでは無いでしょう。
フレーム販売のCHAPTER2のコンポはどうするのがオススメなのか?
CHAPTER2はフレーム販売しか行っていないので、マイクプライド氏本人が考えるパーツ選びについてお伺いしました。
「ホイールはTOAとKOKOなら45mmディープ、HURUやKAHAなら35mmハイト位がおすすめ」「ホイール選びは重要だ。高価なコンポーネントと安いホイ―ル、安いコンポと高価なホイールなら後者を選択すべきだ。もちろん一番大切なのはもちろんフレームだけど(笑) ホイールは2番目に重要だよ」
因みに私物のKAHA(上の方にあるKAHAの写真)は CLASSIFIEDの30mmハイトのホイールがアセンブルされ、コンポはSRAM REDで組まれていました。最近のお気に入りホイールはプリンストンカーボンだそう。
CHAPTER2のホイールについて
CHAPTER2のバイクの写真で、CHAPTER2のロゴの入ったホイールがアセンブルされていることがあります。そして、これは販売予定がないと聞いています。(理由は、納得できる性能&価格にならなかったから)
しかし、今また新しいホイールをテストしているとか。マイクプライド氏の納得のいくホイールが出来上がったら販売されることがあるのかもしれません。もし仕上がったら、どんなものなのか乗ってみたいですね。
※その後発売されたホイール、REHI45はこちら
CHAPTER2以外の自転車パーツに関するオタク・トークが盛り上がった!
で、実はCHAPTER2以外の普通の機材トークも盛り上がっていました。フックレスリムや、他ブランドのフレーム、などの話にも及び、実に楽しそうに話すマイクプライド氏。印象的だったのは、マイクにとって、タイヤはコンチネンタルのCompetitionが最高!っていうこと。チューブラータイヤですね。
このクリンチャー版が出たら買おうと思っているそうです。
まとめ:CHAPTER2の設計はトップアスリート専用ではなく、万人向けのフレームということ
以上、CHAPTER2バイク製作者、マイクプライド氏へのインタビューでした。
意外だったのはCLASSIFIEDは好きだけど、フックレスリムはあんまり好きそうではなかった点。新技術はなんでも好きってわけではない。そして、XSサイズ重視で作るというのは本当だった(笑)
ところで、ロードバイクを選ぼうと思ってカタログを見ていても、スペック、フレーム重量や新技術(ギミック)といったものは分かりやすいのですが、ライドフィーリングへのこだわりや、エモーショナルな部分といった要素は、もう一つ分かりづらかったりします。
今回お伺いしたCHAPTER2のバイク作りをまとめると、剛性値といった数値面も分析しながら、スペック上の軽量さよりも実際の速さやバイクの安定性を重視。トップアスリートだけが真価を発揮できるフレームではなく、どのような経歴の人が乗っても良く進み、足が持続する&楽しめるライド・フィーリングのバイク、そういうのを目指して製作されているということ。
そして設計者本人が、デザインまでこだわっている。そういやマオリ族の友達と話しをして、モデル名やモチーフを決めていると聞いたこともあります。
MikePryde氏はまた日本に遊びに来るっていってたので、一緒にライドしたいとか話を聞いてみたい人は、サイクリングジプシーカフェをフォローしておくといいと思います。
ということで、背が低めで足の残るバイクが欲しい人に合う(多分)、CHAPTER2のバイクの一覧
マイクプライド氏お気に入りのKOKO
マイクプライド氏お気に入りのCLASSIFIED
私はTOAがお気に入り、より軽量なヒルクライム向けバイクより登りが速いのが一番の驚きでした
最新のKAHAの試乗インプレ
CHAPTER2以外で、速くて足が残るような印象のバイクと言えば、CERVELO の S3あたりかなと思います。今はS3はラインナップにはないのですが、サーベロ・ソロイストが同等グレードにあたりますね。
コメント
このプライド氏直筆サイン入り黒TOA、もしかしたら私のかもしれません。
たまたま思い立って小田原方面に走りに行った日、偶然にジプシーカフェでプライド氏にお会いして直筆サインをいただいた事がありましたが、その時にSciffさんも居られたのかもですね。
Sciffさんのインプレ記事を見て、TOAを買うことに決めました。Sciffさんとわかっていたらご挨拶したかったです。
絶対いました!お話させて頂いたと思います。バイクを箱に入れるとかいれないとか・・・
ありがとうございます。8月のフランスParis-Brest-Paris遠征の話をしたと思います。
結局、諸々検討の上、PBPは別のバイクで出場することになりましたが、無事完走しました。
またマイキーさん主催のイベントがあれば、ぜひお邪魔したいと思います。