タイヤサイズによるトレール値の変化とハンドリングの違い、これからのロードバイクのジオメトリ(オフセット)の変化について

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自転車に大きなタイヤをいれると、ハンドリングは基本的にもっさりしていきます。これについて考えてみました。

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タイヤサイズによるハンドリングの違いの考察と、バイクごとのジオメトリの違い。新しいバイク選びでは、オフセットにも注目しよう!

タイヤを大きくするとハンドリングがもっさりしてきます。

考えられる理由の一つはトレール値が大きくなること、もう一つは太いタイヤにすることで空気圧を下げるので、ハンドルを切る時の摩擦とヒステリシスロスが増えるというもの。また、タイヤが重くなると慣性モーメントが大きくなるので操舵するための必要エネルギーも増しますね。このように複合的な理由でハンドリングは「もっさり」していくと考えられます。

タイヤサイズを変更することでのトレール値を確認、タイヤを太くするとトレールは大きくなる

まず1つ目の理由、タイヤを大きくすると直径が変わるので、トレール値が大きくなりもっさり気味に。目安としてはタイヤを10c大きくするとトレールが3~3.5mm大きくなる。

45cを履かせたバイク。タイヤの大きさでトレールが変わってくる

トレール値の目安としては、エンデュランス系ロードバイクの場合 63mmくらい。また、シャキシャキしたレーシング系のロードで58mm。5mm違うとバイクの性格が異なるくらいの差があるといえる。

タイヤサイズによるトレールの変化、実際の体感ではどう異なるか?

実際の例として、私のグラベルバイク CHAPTER2 AO(ヘッド角70° オフセット55mm)のトレール値は以下、

タイヤの太さ トレール

  • 25c 64mm
  • 32c 67mm
  • 45c 71mm

私としては25cを履かせた時のトレール64mmは普通にシャキッと走る感がある。エンデュランスロードとほぼ同じ値なだけある。

25cを履かせた場合、かなりシャキッとしたロードのように走る。グラベルバイクと思って乗ると逆に違和感 ^^;

トレール67mmとなる 32c でももっさり感を感じない。むしろなかなかバランスがいい印象。

しかし、71mmとなる 45cでは特にヒルクライムでハンドリングが重くなったような感じがあってちょっとイヤな感じを受けました。(もちろんタイヤが重くなるし)

45cを履かせるとトレール71mmに。ヒルクライムでバイクを振るのは苦手な感じになりましたが、直進は手を離しても安定して走ります

一方で、ハンドルから手を離して舗装路を走っても、ビシッと安定して直進する。なんかこの感じ、どこかであったなぁ?と思ったら、トレール 73~75mmのビアンキと同じ感じでした。(ヘッド角70.5度でオフセットが43mm)

小さいサイズのビアンキも直進がとても安定していました、23cでトレール73mm、28cでトレール75mm

とはいえ、45cの後に32cを履くと、今度は32cが若干フラフラするように感じられた。しばらく乗っていると、やっぱり走りやすくなってくる。このようにトレールは相対的に感じ取っている部分もある。

タイヤの空気圧を下げることでのもっさり感の変化

タイヤを太くすると、空気圧を下げるのでハンドリングが重くなるという面もある。クリンチャータイヤで一気に空気圧を下げた場合は顕著ですよね。

上記で45cだとちょっとイヤと感じた理由は、このことも影響しているはず。とはいえ、グラベルキングX1R45Cは空気圧を下げ気味でも悪い影響を感じづらい印象があります。理由は恐らく、ノブが固く、空気圧を下げても接地面積が増加しないから、だと思います。

意外と変化を感じないグラベルキングX1R。

摩擦力=垂直抗力✕摩擦係数 (※正しくは下の注を参照)

ですから、摩擦係数の変化はないということですね。

一方で細いスリックタイヤでは非常に印象が悪くなったことがあって、それはIRC の S-light をフックレスリムに取り付けて低圧で走るとかなり印象が悪化。7気圧くらいだと軽快に走る印象なんですが、低圧にして接地面が増えて摩擦係数が増えたのでしょう。

7気圧くらいで乗るなら、この杉目のパターンがよくて安心感があった IRC S-LIGHT。しかし、低圧では杉目のパターンが摩擦を増やしてしまっているのではないか?

一方で GP5000sTR や VELOFLEX で低圧にして悪印象になった記憶はない。タイヤ表面がつるんとしているから印象が違うのかも。

VELOFLEX TLRは非常にしなやかなタイヤなので、ヒステリシスロス(タイヤ変形時のエネルギー損失)も少ないのでしょう。

つまり、空気圧を下げたときに、もっさり感がでるかどうかは、タイヤ自体の「現在の路面に対するグリップ力」で大きく印象が変わるでしょうし、もちろん、ヒステリシスロスの影響もあるでしょう。(グラベルキングX1Rは特にしなやかなタイヤですし、もしかしたら、摩擦よりもヒステリシスロスの影響の方が大きいかもしれません)

※(注)詳しく調べると、タイヤの摩擦力=タイヤ表面のグリップ力+ヒステリシス摩擦(ゴムの変形による摩擦)、になるようだ。

タイヤ重量や積載による慣性モーメントの変化

また、太いタイヤは重くなるので、慣性モーメントが大きくなりハンドリングが重くなるという点もあるでしょう。フロントバッグやパニアバックを装着するとフォーク周りが重くなってハンドリングが重くなったりするのも、慣性モーメントの影響ですね。(もちろんフロントの重量がまして、上記の摩擦力が増すというのもある。)

フロント積載するとハンドリングは重くなる

分かりやすい例としては、アルミハンドルからカーボンハンドルに変えて、ハンドリングが軽快になった経験のある人も多いのではないでしょうか?

※以前計算したホイールの慣性モーメントについて(相対的な数値ですが)

より太いタイヤや荷物を積載する用途向けに設計された バイクの場合のジオメトリー(CHAPTER2 KAHAやランドナー、FACTOR OSTRO Gravelの場合)

ここで気になったのが、より太いタイヤに設計したバイクのジオメトリはどうなっているのか、という点。例えば、AOより太いタイヤに適合した CHAPTER2 KAHAというバイクは、ヘッド角71° オフセット65mm(!?)

CHAPTER2 KAHA、AOより太いフロント 50c リア 47c に対応。グラベル・レーシングモデルの位置づけ。

フロントまわりの設計が同じグラベルバイクのAOとは全く異なります。CHAPTER2によれば、よりレーシングにした設計。この場合トレール値はとんでもない値になります。

  • 28c トレール 48mm
  • 35c トレール 52mm
  • 45c トレール 54mm

私が試乗した時、試乗車には35cがついていて、それでいてよく登る印象でしたが、改めてトレールを確認すると驚きの52mm!47cを履いたときにトレール54mm!このトレール 54mmって、超シャキシャキ系のロードバイクのハンドリングだと思います。えっとグラベルバイクでそんな設計のバイク他にある???ジオメトリの誤植を疑うレベル。しかし、下り道でもハンドリングが破綻していたような印象はありません。

もしかすると、トップチューブの長いプログレッシブジオメトリを採用した設計だと、このようになるのでしょうか?他に同様なジオメトリ(トップチューブが長いタイプ)を持つのは TREK の CHECKPOINT。

トップチューブの長い特徴的なジオメトリを持つ TREK CHECKPOINT

この場合 52cmサイズで、ヘッド角71.6° オフセット45mm なので

  • 28c トレール 66mm
  • 35c トレール 68mm
  • 45c トレール 71mm

むしろ超普通。他にFELTなどをチェックしても45cなら70mm以上のトレールが普通のよう。

レーシング・グラベルバイクである、スペシャライズドのCRUXはオフセットが50mm。つまり、CHECKPOINTよりもトレールは5mm小さくなり、45cで67mmのトレール値。67mmは私は良い塩梅だと感じたし、TREK CHECKPOINTよりシャキッと走るんじゃないかな?

やっぱりKAHAのジオメトリは特殊。太いタイヤを履いて空気圧を下げたときに、ロードのような走りを実現するためにこのような設計にしているのでしょう。(ということで 28cを履くつもりなら、KAHAを選んではいけません^^;)

おそらくですが、荷物を積載するとフロントのハンドリングは当然もっさりになっていくので、KAHAは積載も含めて設計していると思います。何故ならこの下のアラヤのランドナー、フロントフォークがぎゅっと曲がっていますね。

参考までにアラヤのランドナー。これのオフセットが60mm。タイヤが650bなので、トレイルは47mm程度かな??

これでオフセットが60mm。CHAPTER2 KAHAって、まさかのこういう設計をしてるようです。つまり、高性能なディスクブレーキ・ランドナーを欲しい人はCHAPTER2 KAHAを選びましょう(笑)

ちなみに、とても気になったネオランドナー DAVOS D-604 のオフセットは不明でした。

DAVOSのネオランドナーD-604も同様の設計になっているかとても気になりますが・・・

そんな中、おっと思ったのは、FACTORのOSTRO Gravel。

FACTOR OSTRO Gravel トレールが57mm-62mmの間に収まるように設計されている

45mmを履かせたときにトレールが62mmとエンデュランスロード並み。ちょっと乗り味を試してみたいですね。

まとめ:太いタイヤを履くためのバイクを選ぶときは、オフセットにも気をつけてみよう。

太いタイヤを履くことが出来るグラベルバイク。このグラベルバイクって、やはり多様な使い方をされるためタイヤは30cから50cくらいで最適化された設計だと思います。ただ、その中でもどれくらいの太さのタイヤに最適化したか?どれくらいのハンドリングで設計したか?というのはバイクによって変わってきます。

ということで、本当に太いタイヤを履くためのグラベルバイクなら、大きめのオフセットがあるバイクに注目してみるのも良いかもしれません。太いタイヤでもロード並みのハンドリングを目指したバイクは今はレアですが、今後 CHAPTER2 KAHA や OSTRO Gravel の他にも発売されると予想されます。

オールロード化が進むロードバイク。ハンドリングのシャキシャキ感を求めてオフセットが大きくなってきてもおかしくはない

また、グラベルバイクだけでなく、ロードバイクのタイヤも太く&低圧になりつつあるので、今後はロードバイクのオフセットも長いフレームが発売されるようになるのではないでしょうか。(速く走るためのオールロード系で3ミリほど大きくなりそう)

※個人的には、トレール値って、ヒルクライムでの登りの軽さにかなり影響する印象があるので注意しています。

これからのロードバイクのジオメトリ!?フックレスリムや太いタイヤの影響で、長めのオフセットへ。CERVELO(サーベロ) SOLOIST(ソロイスト)や、ASPELO(アスペロ)の例

上で記事を終わらせようと思っていたのですが、気になって調べてみると、

例えばSOLOISTでは、実際にオフセットが長めに見えます。

小さいサイズでは57.5mmのオフセットがあります、ヘッド角73度で45.5mmというのは少し長い印象(従来のイタリアンロードバイクだとオフセット43mm、25cでトレール58mmになるような設計が多い)

完成車で履いた29mmのタイヤで、トレール値は57mm。32mmのタイヤで従来のロードバイク基準のトレール58mmになります。これ絶対に狙ってやっていますね。※ちなみにSOLOISTの最大タイヤ幅は34mmとのこと。

また、サーベロのアスペロはオフセットの調整機構が付属していますが、ロードバイクでもフロントバッグを使ったり、タイヤを太くしたりというように、乗り方が多様化している中、この機構の重要度はさらに増していると感じます。

チップを入れ替えることでオフセットが変更できるアスペロのフォーク

ジオメトリについても深い記述がある「自転車道」。トレールについては更に突っ込んで、耳慣れない「P点」という記述があります。

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